第二次世界大戦後、ニューヨーク郊外の静かな田舎町、ワトキンス・グレンでアメリカンロードレースが本格的な復活を遂げた。このとき、豪快なサウンドを轟かせていたのはキャデラックエンジンだった。キャデラックは、1949年にV型8気筒OHVエンジンを導入したのに引き続き、1950年代前半には、スポーツカー「アラードJ2」および「アラードJ2X」を導入。これらのスポーツカーが発端となり、エンスージアストたちがアメリカンロードレースへと一気に目を向けるようになったのである。そして6月10日、そのレース発祥の地にチーム・キャデラックが戻ってくる。歴史あるワトキンス・グレン・インターナショナルで、SCCAスピード・ワールドチャレンジGTシリーズ第5戦が開催されるのだ。
今回のレースでは、キャデラックのパフォーマンス・ラグジュアリー・セダン、キャデラックCTS-Vが、ワトキンス・グレンのパーマネントサーキットを疾走する。このマシンは、50年前に走ったヴィンテージカーとはまったく別物へと進化した。量産型のCTS-Vをベースとするキャデラックのレースカーたちの生まれ故郷は、ミシガン州ランシングにあるGMグランドリバー工場。ロールケージ、安全装置、コンポジット・ボディパネル、エアロ・リアウィングと、レースで戦うための準備が万端に整ったマシンには、フューエルインジェクション式6.0リッターGMスモール・ブロックV8エンジンが搭載される。
キャデラックのドライバーであるアンディ・ピルグリムは、この歴史あるロードコースで勝利の歴史を刻んできた。2005年スピードGTの優勝者でもある彼は、1986年以降、6シリーズ25戦に出場。優勝3回、表彰台11回、ポールポジション4回という実績を持つ。その中でトップ10入りを逃したのはわずか2回だ。5月24日、ノースカロライナ州シャーロットにあるロウズ・モーター・スピードウェイ(改修後のオーバルコース)で優勝して間もないピルグリムは、お気に入りのサーキットに戻ってきた喜びを次のように語った。
「僕はスピードの出るサーキットが好きだが、ワトキンス・グレンはその中でも特にスピードが出るコース。気分良く走れるし、北米では最も気に入っているサーキットの1つだ。コース沿いに樹木が生い茂り、降雨量が多いという点ではイギリスやドイツのサーキットと似ている。ワトキンス・グレンは純粋に素晴らしいサーキットだ。」
ピルグリムにとって、ワトキンス・グレンでのレース経験は20年を超えるが、チームメイトのローソン・アッシェンバッハにとっては、このレースは初体験。だが、現在23歳の2006年スピードGT優勝者は、3.4マイルの高速サーキットにはすぐ慣れるはずだと、レース前から自信をのぞかせていた。
「他シリーズのインカービデオをあらかじめ見ておけば大丈夫だ。最初のプラクティスセッションでの1、2周は、アンディについていこうと思っている。」とアッシェンバッハは語る。「コースは違っても同じ原理が通用するものだ。ブレーキはできるだけ遅めに、コーナーを抜けるときはできるだけ高速で、そして加速はできるだけ早く、といった具合に。チームには素晴らしいエンジニアやメカニックがいるから、現地での僕のキャデラックのセットアップもきっとうまくいくと思う。」
「新しいサーキットに足を踏み入れる前は、歴史のあるトラックでこれから走るんだなという感じ。だが、いったん足を踏み入れたら、もうそこはレース場でしかない。いつもと何も変わらない。僕としては、チーム・キャデラックのためにチェッカーフラッグを手に入れるだけだ。」
ワトキンス・グレンでのスピードGTに関する過去データがまったくないという状況の中、チーム・キャデラックのエンジニアスタッフは、豊富なハイテクツールを武器にレース前のセットアップを進めていくつもりだ。
「我々にはGMの他のロードレーシングプログラムから得たデータがある。ワトキンス・グレンではそれらのベースラインやスターティングポイントを使ってシミュレーションできる。」とチーム・キャデラックのレース・オペレーションズ・マネージャー、ケン・フローリーは語る。「このサーキットは、スピードGT の開催地としては平坦なコースであるため、マシンを硬めかつ低めに調整する必要がある。キャデラックのレースカーは、どちらかというと、タイトな低速走行のコースより、今回のコースのような全体に緩やかで高速で飛ばすサーキットを得意とする。だが、スピードGTでウェイトハンディを課されているため、車高調整はそう簡単にはいかないだろう。」
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