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キャデラックとラサールの紋章学 リサーチ:ハリー・パルファー イラスト:ジョー・トレイナー

 自動車のエンブレムには有名なものが数々あり、手の込んだ繊細な芸術作品と呼べるものも少なくない。パッカードのコーモラン(鵜)、ロールスロイスのフライングレディ、ダイムラーベンツのスリーポインテッド・スター、そしてヒスパノ・スイザの飛翔するコウノトリなどが代表的だろう。しかし、世代を越えてエンスージアストたちに知れ渡っているシンボルは、Le Sieur Antoine dela Mothe Cadillac の楯型紋章であろう。その紋章は1905年にキャデラック製の自動車に採用され、1906年8月7日に商標登録されたものである。以来、この楯型エンブレムは「スタンダード・オブ・ザ・ワールド」たるキャデラックをあらわす不変のシンボルとなっている。この紋章の起源はあまり広く知られてはいないが、このエンブレムを深く知ろうと思う人たちには興味のあることだろうと思う。
 

 直接的な記録はないが、歴史家によるとキャデラックは1658年3月5日にガスコニーの良家に生まれたとされる。キャデラックは英国陸軍で将校に任ぜられたが、それは良家の子息にしか与えられない地位なので、家柄の良さは間違いないであろう。英雄となることを夢見て、彼は新世界アメリカへと旅立つが、その頂点は1701年のデトロイト創立とミシシッピの統治であり、後者の業績に対して太陽王ルイ14世はキャデラックをセントルイス勲爵士団の1人に任命した。しかし、それらの出来事は、キャデラック家の紋章がフランス紋章集において代表的なものとして認められてから、まる4世紀が過ぎ去ってからのことだった。紋章集に見られる原文の翻訳は、以下の通りである。

「紋章:四分割式(楯型を4部分に分割);第1および第4(クォーター)金、フェス(横帯)1本、3羽の黒のマーレット(紋章に使用される鳥)の間もセーブル(黒)、マーレットはチーフ部(上部1/3)に2羽、下部に1羽。第2および第3(クォーター)ギュールズ(赤)4分するアルジャン(銀)バー3本(小さなフェス)アズール(青)。」

 この楯型紋章を部分に分けて考えると、こうなる:  宝冠。フランスの古い6伯爵家を表現する。真珠の数は家紋においても、自動車のエンブレムでも数が異なるが、トゥールーズ伯爵の家系であることを示す。  楯。紋章学では、楯は円形でも他の形でも、貴族家系の武勇の出自を表現する。それは十字軍の楯の形から取られたものである。デトロイト市民図書館のバートン歴史コレクションに収蔵されているキャデラックの手紙にある封印は円形で、これは後の時代に使われる典型的な楯型よりも古いものである。

 第1と第4セクション。de la Motheの紋章を示している部分である。鳥、あるいは「マーレット」はイワツバメを紋章化したものであるが、足もくちばしも省略されている。歴史家Guillameは、「マーレットの図案は、跡継ぎの弟たちに、違いを思い知らせるために与えられたものだ。出世をするためには美徳と優秀さという羽根を身につけなくてはならず、足を落ち着ける土地はないのだ、ということなのである」と言っている。3羽の組で表現されるとき、マーレットはまた神聖な三位一体をも表現する。3羽のマーレットは、十字軍で大きな貢献を果たしたものに対して紋章院が与えたものであることが通常だ。黒と金という色の組み合わせは、知恵と富を表現する。横帯「フェス」もまた十字軍への貢献者へ贈られたもので、Guillameによると「武勇勲章のようなもの」であり、その紋を身につけるものは「常に大衆の安寧に貢献する心構えができていなければならない」のだという。

 第2と第3セクション。赤、銀、そして青の解釈に関して歴史家の見解は一致している。これは、縁組みにより領土を拡大できた記念に、de la Motheの家紋に加えられたものである。各色の意味は、「武勇と大胆さ」(赤)、「純粋さ、慈善心、美徳、豊穣さ」(銀)、そして「騎士道的剛胆さ」(青)である。

 1922年にキャデラック・モーターカー・カンパニーは、この紋章を「純粋に紋章学的な意味とともに、家紋には歴史的な意味もある。あらゆる頁飾は歴史とつながり、その出自、家系、行為、奉公、名誉、共同関係などが表現されている。フランスでは、キャデラック家は最古の家系である。意匠的威厳と、細部の重要性において、キャデラックの紋章は、デトロイトの父のさらに祖先の、勇気と名誉を声高に語るものだ。」と説明している。

 確かに、その比喩は的を得ている。世界中で、キャデラック家の紋章ほど由緒正しいものはそう存在しないからだ。時を超える威厳を持って、まさにその家系に適切なこの紋章は、統一性と名誉を物語る。自動車と紋章のこの組み合わせは、まさに起こるべくして起こったと考える人もいるだろう。

 カリフォルニア州ラ・クレセンティーナ在住のハリー・パルファー氏は、自動車のエンブレム研究を趣味とし、レストアを行う人々向けに複製を製造している。何千もの自動車のエンブレムを収集している彼は、とくにキャデラックのエンブレムの変化とその起源を重点的に研究している。レストアを行いたい人たちばかりでなく、一般読者にも興味深いものとなるよう、この付録にはさまざまなキャデラックとラサールのエンブレムと年毎の重要な変化を記した。その中心は、読んでいただくと分かるが、いままで述べてきたキャデラック家の高貴な楯型紋章である。
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